今回レビューを行うのは、珍しくボン・ボア産100%のコニャックです。その名も「コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976 (Mauxion Bons Bois Multimillesimes 1973-1975-1976 )」。
この貴重なヴィンテージがブレンドされたコニャックの魅力やいかに・・・
コニャック Mauxionとは?
Mauxionファミリーは1743年からオードヴィーを作り続けている300年以上続く作り手。その伝統が引き継がれ、現在はMauxion Selectionとして様々なコニャックをリリースしています。
特徴としては「シングルクリュ」「ヴィンテージ入り」「カスクストレンクス」コニャックであること。Mauxion Selectionはグランドシャンパーニュ・プティットシャンパーニュ・ボルドリ・ファンボアの4エリアをメインとしています。(今回は珍しいボンボア産100%のコニャック)
中には1914年蒸留の物など、100年以上昔の原酒も多く扱いがあります。
実はこのMauxion Selectionが商品としてリリースされたのはここ最近である2015年のこと。Cognac Prunier との共同プロジェクトでもあるのです。原酒自体はPrunierが保有しているものをMauxionが厳選し樽を買い取り、Mauxion Selectionとしてリリースしたものとなります。
珍しいボンボア産のコニャック
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、コニャックの生産域は
- グランドシャンパーニュ
- プティットシャンパーニュ
- ボルドリ
- ファンボア
- ボンボア
- ボアゾルディネール
の6エリアに生産域が分かれます。それぞれ特徴が異なるのですが、基本的に下にいけばいくほどそれ単体の原酒で構成されるコニャックは少なくなります。特にボンボア、ボアゾルディネールはブレンド時に使用されることは多くありますが、それ単体でコニャックとして商品化されるのはレアケースと言っていいでしょう。
ボンボアの生産域はボン・ボアは沿岸部の砂地質の土壌や谷、また南部のブドウ畑に位置します。 この砂は中央山塊が侵食されて運ばれたものです。このボン・ボアのブドウ栽培の特色は、他の作物や放牧地、または松林や栗林と隣り合わせになり栽培地が集中していないことが挙げられます。
ミネラルが豊富で高品質なブドウが育つグランドシャンパーニュ地区などと比較して、その土壌の特徴から一般的にボンボアのコニャックは香味がやや痩せているという評価を受けることが多い傾向にあります。その中でも今回あえてボンボア100%の樽を選出し商品化してきたのにはそれ相応の自信が見受けられます。
コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976の基本スペック
ここで改めて今回のボトルの基本スペックを見て参りましょう。
コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976
容量:700ml
アルコール度数:49.5%(カスクストレンクス)
ヴィンテージ:1973年・1775年・1976年(ブレンド比率は後述)
瓶詰:2021年5月20日
ノンチルフィルタード
限定生産300リットル
価格:330ユーロ(2021年7月時点)
ご覧の通りMauxionが厳選した3つのヴィンテージがブレンドされたコニャックをカスクストレンクス、ノンチルフィルタードで詰めた300リットル限定の逸品です。
ヴィンテージのブレンド比率は1973年が41%、1975年が56%、1976年が3%となっています。ここまで詳細なスペックが分かるのはありがたいですね。
そして瓶詰は2021年5月。それまでは樽に眠っていたそうなので、ヴィンテージの間をとって約45年熟成ということになります。
さっそくレビュー
前置きが長くなりましたが、早速レビュー・・・
手吹きのボトルが何とも良い雰囲気を醸し出していますが、まず、色。この色よ。
見た目的にはダニエルブージュにも引けを取らないブラックコニャック。めちゃめちゃ濃そうだが果たして・・・。
香り立ち
まずめちゃくちゃインパクトがある。力強くスモーキーなアタック。
オークやハーブやシダ植物、バーベキューに使う炭火を連想させるスパイシーさ。ところどころに見え隠れするドライオレンジ。
最初の一発目からグランドシャンパーニュやボルドリといった華やか系コニャックとは一線を画す香り立ち。沿岸部で作られた俺たちを存分に感じよ!と言わんばかりの主張ですが、ただ無骨な荒々しさとは全く異なる何十にも変化するその香味がどこか興味を引いて私の鼻を放そうとしません。
セメダインの香りを感じますが、この場合は決してネガティブな意味ではなく先述したスパイシーさと相まってどこかクセになってしまうある種の心地よさがあります。
味わい
口に含んだ瞬間に炸裂する数十種類ものスパイス(のような感じがする)。その色濃さに現れる樽由来の深い渋みを含んだタンニンを存分に感じつつ、落葉の絨毯が広がる雨上がりの 森の中を散策しているような気分を味あわせてくれます。
余韻はまさしく木や藁、干し草を連想させる香味が長く舌と鼻腔に留まります。
フローラル、フルーツ感といった要素は完全に影を潜めているこのコニャックは、これまでグランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュといったコニャックを飲み慣れている人にとっては衝撃的かつ大変興味を抱かせる味わいです。
通常であればここまで渋いコニャックの場合はどうしてもネガティブな印象を持ってしまうものなのですが、これがボンボア産100%コニャックであることを前提とする場合180度見方が変わってきます。
もはやこれまで飲んできた「華やかさ」「フルーティーさ」を求めるコニャックとはある意味別次元の完成度を誇るコニャックと言っていいでしょう。ここまで振り切れていると逆に心地よいです。
ボンボア100%というコニャックの新境地と新たな可能性を感じる味わいです。
アイラ系のウイスキーのようなピート感とはまた違うスモーキーさではありますが、ピーティーなウイスキーが好きな人はハマるかもしれません。
この個性的な味わいからも、必ずしも万人におすすめできるというコニャックではないですが、ある程度グランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュ、ボルドリ、ファンボアのコニャックや、華やか系、フルーティー系のコニャックを味わったことがある人は是非試して欲しいコニャックでもあります。
コニャックという一つのカテゴリにおいて、ここまで個性的な香りと味わいに出会うことができる貴重な1本です。
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